福岡で破産や相続に強い弁護士への無料の電話相談をお考えなら弁護士天野広太郎

弁護士ブログ

愛人への贈与の取戻し

2017.09.19更新

 台風が去り少しずつ涼しくなってきました。ソフトバンクホークスも優勝しましたので、変わらず頑張りたいと思います。

 

 私は大学に入ってから法律の勉強を始めましたが、そのとき自分とは一生関係のない問題だろうなぁ・・と思った事案があります。

 

 事案の概要:男性Xが愛人Yとの不貞関係を維持することを目的としてX所有の建物を愛人Yに贈与し、愛人Yはその建物に住むようになりました。その後、男性Xは愛人関係が解消されたことを理由として、愛人Yに対し、建物の明け渡しを請求しました。男性Xの主張は認められるでしょうか。

 

 直感的に考えると、男性Xが自ら贈与しておきながら、後になって返せというのは認められない感じがすると思います。そして、法律上の結論も男性Xの請求は認められないということになります。男性Xの請求が認められない理由は少し複雑ですが次の通りです。

 

 愛人契約の維持を目的とする男性Xから愛人Yへの建物の贈与は、公序良俗に反しています。そのため、同贈与契約は無効となります(民法90条)。そうだとすれば、建物の所有権はずっと男性Xの元にあったことになるので、Xの請求が認められそうです。しかし、Xの請求を認めると、公序良俗に反する不法な行為をしたXを法律で助けることになってしまいます。そこで、類似事案の裁判例では、「不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない」と規定する民法708条の趣旨に照らして、Xは物の返還を請求することもできず、Xの建物の返還請求が認められない反射的効果として、建物の所有権が愛人Yに帰属すると判示されました。(最高裁昭和45年10月21日大法廷判決参照)

 

 古い裁判例の中には、現在ではあり得ないような事実関係のものが多くあるので、そのような事案を調べるのも面白かったりします。月9のビギナーというドラマで取り扱われた「宇奈月温泉事件」がドラマ放送の頃からとても好きな事件でした。興味がある方は是非調べてみてください。

投稿者: 弁護士 天野広太郎